東京オリンピックの開催による建設投資、あるいは人口減や働き方改革による人材不足など様々な要因が影響して、住宅の建設費も高騰しつつあると言われています。
生涯の中でも住宅が最も大きな買い物であることは間違いないでしょう。その大事な住宅価格はどのように見極めればよいのでしょうか。
住宅の動向
今、家を建てようとしている家族がどれだけいるのか。住宅の市場動向がどうであるかなど、すでに持ち家に住んでいる方にはあまり興味のないことかもしれません。
あるいは、たとえ住宅取得を検討していたとしても他の人の住宅計画の動向は、やはり関係のないことです。
でも、住宅の価格となると、これから家を建てようとしている人にとっては、最も切実な問題の一つになるでしょう。すでに家を持っている人にも家の価値を再建築費用で検証しようと思えば気になる情報だと思います。
そこで価格の動向を政府統計の中から抽出して調べてみました。ここでのデータは一戸建ての住宅の統計値であり、アパートやマンションの傾向は含まれていません。
例えば、家を建てている家族がどれだけいるかという傾向は特定の1年を除けば大きくは変わっているようには思えません。その特定の1年とは2013年で消費税が8%に変わる直前の駆け込み需要です。逆にその翌年は反動で少なくなっています。確かに、たった1日で60万も100万も見積もりが上がると考えれば当然のことです。
それに対して2019年秋の消費税10%への増税では同様の駆け込み需要はありません。冷静に消費税増を迎えられるよう、政府も様々な施策を講じています。
同様のデータの中で、工事予定額はじりじりと上昇を続けています。2011年と現在を比較するとなんと135万円も上昇しています。2~3%の消費税どころか6%近くも工事費が上がってきています。これから建てる人にとっては大きな問題点です。
でも、工事費が上がっていることだけでは住宅価格はわかりません。同時に住宅の規模がどのように変わっているのかを確認しておく必要もあります。
住宅面積はしっかり減少傾向にあります。つまり家は少しずつコンパクトになっているのです。収入が増えなければ総予算額を増やすことは出来ません。じつは建設費が高くなることに対して、住宅の面積を小さくすることで予算を押さえている傾向が見えるのです。
この2つの情報があれば平均的な住宅の坪単価を割り出すことが可能です。住宅が小さくなって工事費が上がっているので、坪単価は顕著にあがることになります。2011年と比べたら12.5%も坪単価は上がっているのです。
住宅の坪単価
こうした坪単価が上がっている動向にはさまざまな要因が語られています。その代表に東京オリンピックを控えた人手不足があり、その人出は災害復旧などでも不足しています。
さらに働き方改革の波は建設業へのなり手を減らしかねない状況を生み出しています。悲観すれば将来的に家を建てることは簡単には出来ないことになるかもしれません。いずれにしても政府と日銀で物価上昇目標を定めているように、物価の値段が上がることは国の施策でもあります。
でも、住宅の価格は消費者物価指数の基準値には含まれていません。住宅は消費財ではないという判断によるものです。消費財ではないのに消費税の対象になるというのは、政府に良いところどりされているように思えますが、法律なので仕方ありません。
さらに政府統計の坪単価は年次の動向だけでなく、都道府県別の坪単価として確認することもできます。
住宅の多くが木造ではなく鉄筋コンクリート造で建てられている沖縄県が東京都以上に坪単価が高く、その後に神奈川県・愛知県と続きます。そして2018年のデータでは全国の平均は63.6万円です。
全体としては市部の方が郡部よりも高い傾向にありますが、寒冷地や温暖地という気候や地域の傾向はあまり読み取れません。住宅価格はそれほど単純ではないようです。
坪単価の落とし穴
このような坪単価が分かれば住宅の価格も簡単に割り出せそうな気がします。例えば平均的な面積である36.3坪であれば2309万円です。
実際に政府統計の平均的な工事予定額であり、同様に各都道府県の坪単価とかけ合わせれば平均的な地域での住宅価格を求めることができます。
36.3坪×63.6万円=2308.68万円
しかし、坪単価はこうした統計的な比較を行うためには役立ちますが、実際の建築費として検討するのには、あくまでも参考にしかなりません。
それが最も良くわかるのは住宅にかならず必要となるキッチンや浴室などの水回り設備などの機器の費用です。どんなに小さな住宅でもこれらの設備を設置しないわけにはいきません。
例えば300万円ほどの設備費用は30坪の家では坪10万円となります。しかし、50坪の家では坪6万円となります。
かといってキッチンや浴室が面積の大きさに細かく比例して選ばれている訳ではありません。その上、小さな家でもグレードの高い設備機器を選ぶことも普通に出来ます。
また、建物の形状によっても大きく変わります。たとえば同じ30坪の家でも平屋と総二階建てでは基礎工事や屋根工事など平屋の方が倍の面積になります。平屋の方が割高の坪単価になるのです。
さらには床面積の計算方法にも不明確な部分があります。たとえばバルコニーは法的な面積には含まれませんが、防水や排水の工事をしっかり行わなければなりません。面積の数え方が変われば坪単価も変わります。
ですので、最終的にな見積価格を坪数で割ってみて驚くこともよくある話です。最初から坪単価を基準にして検討してしまうと、大きな勘違いを生み出しかねません。最終的にはかならず総予算額で検討することです。
ーおうちのはなし197号より抜粋
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