おうちのウィルス対策-免疫力を高める家

Pocket

Contents

ウィルスと感染症

 COVID-19と名付けられた新型肺炎感染症の広まりは、多くの人にこれまでにないウィルス感染への不安をもたらしています。
 まずは、この敵となっているウィルス(SARS-COV-2)の姿や大きさはどのようなものなのでしょうか。

(AERA 2020年2月24日号より)

 ウィルスの大きさは0.1マイクロメーター(1000分の1㎜)で、いかにウィルスが小さいものかが分かります。ウィルスは核酸だけを含むカプセルのようなもので、単独では増殖をすることもできず、人の細胞に侵入して増殖するものです。
 人の細胞内に寄生し、細胞膜をもっていないので、直接作用する治療薬の開発も難しく、免疫機能の活性化を利用する薬が多くなります。人のCOVID-19は軽症が多いという報告のわりに、感染力があって重症者への治療法も分からないので、どうしても不安が大きくなります。
 こうした病気を引き起こす微生物には、ウィルスの他に細菌と真菌があります。大きさがウィルスの10羽有為ほどあるのが細菌です。細菌には細胞膜があり、環境が整えば細胞分裂で自己増殖します。細胞内に入り込んで寄生しなければ、増殖できないウィルスとは大きな違いです。
 さらに、それよりも少し大きい真菌はカビの一種で、定着すると菌糸を伸ばし枝分かれしながら成長してゆきます。人体には有害な真菌もあり、その一種の白癬は俗に言う水虫です。真菌に対しては細胞膜の合成を阻害するか、破壊する抗真菌薬が使われます。
 大きさは細菌や真菌の種類によって違いもありますが、大気汚染で話題にもなっているPM2.5と似たような大きさです。小さくて空気中にも長時間漂うので、遠くまで移動することもあります。細菌による病気には、増殖を抑える他、細胞に直接作用する抗菌薬や抗生物質が有効です。
 細菌や真菌は害をあたえるものばかりではありません。乳酸菌や納豆菌をはじめとして、人の体の中に共生して消化を助け体調を整えてくれる腸内細菌もあります。同様に真菌にも、お酒や味噌醤油をつくる麺菌や納豆菌があります。要は人に有害か有益かで腐食と発酵の違いとなります。
 さらに、アレルギーのある花粉や髪の毛の太さなど大きさを比較すると上の図のようになります。この中にさらに一般的なマスクの隙間を表現するとおよそ5マイクロメーターとなります。
 花粉に有効であることは間違いないのですが、COVID-19で問題視されている飛沫にも有用といえます。しかし、飛沫と同時に発生する飛沫核はマスクの隙間を抜けてしまいます。それは飛沫核を出す側も受け取る側も同様です。
 そのためにはPM2.5に対応したマスクが必要です。そうでなくても不足しているマスクに、この条件はより厳しくなるばかりです。とにかく、密閉された空間で長い時間を過ごすことがある場合には換気をしっかり行うことが第一です。

風通しの良い家

 人がつけるマスクと同じように、住宅の換気システムにも、PM2.5用のフィルターがあります。とは言っても感染するほどのウィルスが外から家の中に入り込むとは思えません。それよりも換気こそ、まさに家の問題です。
 近年の日本の省エネ住宅では高い気密性が求められています。それは空気を逃さないためではなく、実は上手に空気を入れ換えるために必要な事なのです。
 換気量については、少なくとも2時間に1度の空気の入れ換えがあるように求められています。この時、しっかりと換気の経路を確保するためには気密性が無いと計画できないのです。そして、排気の熱を回収してエネルギーの浪費を避けています。
 その上で、日本の家は中国やヨーロッパの家よりも窓が大きく換気に向いている家といえます。本当に気密が必要な季節も、それほど過酷ではなく長くもありません。
 さらに、集合住宅が多い外国に比べて日本の戸建て住宅では四方に窓が取れるので風通しの良い家にできます。換気という家の条件で考えれば、日本の家は少しだけウィルスに対して有利かもしれません。

清潔な家

 マスクの効用は、吸引を防ぐことよりも拡散させないことが基本です。その意味では罹患者がエチケットとして着用すべきモノです。
 もちろん、防ぐためにも有用な面はありますが、マスクの表面を安易に触ってその手で顔などに触れるのは、菌を集めて身体に入れているようなものです。ウィルス対策にはマスク以上にこまめな手洗いの方が大事です。
 この点でも、比較的日本の住まい文化はウィルス対策に適していると考えられます。なによりも靴を脱いで家に上がり、外と内を区別して暮らしています。
 さらに多くの日本人を悩ませる花粉症も、その対策はウィルス対策に通じています。近年の家では玄関にしっかりとクローゼットを設け、外衣を家の中に持ち込まない工夫をしています。
 できることであれば、入口にアルコール消毒が置いてあるのと同じように玄関に手洗いを設けると、家の奥にあるよりも不用意な菌の持ち込みを防ぐことが出来るようになります。戸建て住宅であれば、増築して対応することも可能です。こうした清潔さを保つことも日本の住まい文化の一環です。

自然免疫力

 こうした中、COVID-19はついにWHOがパンデミックであることを発表しました。世界でも防ぎきれない国が続出し、罹患する確率は決して低くはありません。そして、有効な薬や治療法が確立していないのも心配です。
 一方、罹患者の80%が軽症という報告もあります。新型ということで、これまでのウィルスのようなワクチンという獲得目根期システムもなく、現状では自然免疫力を高めることしかありません。
 抗酸化作用によって、体内の活性酸素を無害かすると言われるポリフェノールや食物繊維、さらにはビタミンB、ビタミンCなど食事による自己免疫力の向上方法はたくさんあります。普段の生活が大切なことはもちろんです。
 これぬい加えて、家で過ごす生活の中で免疫力を高めることもあり得るはずです。たとえば睡眠であり、もう一つは入浴があります。
 例えば、動物は争いがあって傷を負ったときには安全な場所にこもってコンコンと眠ります。食事を摂るよりも眠ることの方が治癒には有効なのです。良い睡眠がとれる家は免疫力を高める家でもあるはずです。
 じつは、この睡眠のシステムは寝る場所である寝室だけにあるわけではありません。体内時計にある睡眠のリズムをリセットするためには、朝にしっかりと光を浴びることが大事です。できれば朝日の当たる東向きの窓を決めて朝のひと時を過ごせるようにする事が睡眠に良いのです。

リラックスの時

  また、もうひとつの免疫力を高める習慣としての入浴も睡眠への効果が期待できます。人は深部体温が低下することで眠りに入ります。入浴によって体温を高めておくと、より良い睡眠へと導いてくれるのです。
 さらに入浴して体温を約38度まで高めることも免疫力を向上させます。少し熱めの湯に浸かることで、ヒートショックプロテインが発現して身体を守ってくれるのです。十分な熱刺激を受けるためにはシャワーという習慣だけでは足りません。
 さらに入浴剤を使うとさら湯よりも短い時間でヒートショックプロテインの発現が起きることも分かっています。このような入浴習慣も日本の住まい文化特有のものです。
 そして湯に浸かると不思議とリラックスします。これによって自律神経のバランスが整えられます。ウィルスと戦うと思えば交感神経が働き緊張状態となりますが、湯に浸かることで副交感神経が働きリラックスします。お風呂に入って自然と長いため息をつくことも、副交感神経の働きを助長してくれます。
 大切なことは、こうした機能を知らないままに暮らしているのではなく、免疫力を向上させているという意識をもって入浴や睡眠をとることです。

健康の見方

 自己の自然免疫力だけではなく、自然の中には期待できる味方もいます。腸内細菌も善玉の細菌が多ければ体調を保つこともできます。そもそも細菌に対する抗生物質も、真菌であるカビが有している対抗措置を人が利用したものと考えれば、ウィルスや細菌と戦っているのは人間だけではありません。
 たとえば動物や樹木が発するフィトンチッドには殺菌力があります。森林浴などで癒やしの効果として紹介されることが多いのですが、植物の殺菌作用から名付けられたものです。植物にとっても有害な菌を排除しなければ自分の身を守ることが出来ません。
 たとえば観葉などでよく使われるゴムの木などのフィカス系の植物は、有害なホルムアルデヒドを除去し空気を清浄化する効果があるとされています。観葉植物を健康の味方として手入れすることも住まい文化の一環です。

困ったときの小間

 最後に、家に欲しい間取りのひとつがパニックルームです。なかなか予算も限られ、部屋の数に余裕を持たせることは難しいかもしれません。少しでも家族が集まるリビングダイニングを広くしたいのも当然です。でも、小間を設けることが出来れば理想です。
 たとえ広さは3畳ほどでも良いので、最初から目的を決めた部屋としてでは無く用意しておきます。犯罪や災害に遭遇したときに逃げ込む部屋として使うとパニックルームになります。
 単純な小間があれば、多くはモノが収納されて納戸になってしまうかもしれません。たとえ3畳でも畳が敷いてあれば部屋としての認識が生まれます。狭い空間に友達と集まれば会話が弾むことは間違いありません。
 このような小間があると、感染症が家族に出来たときの看病部屋になってくれます。
 もちろん、なによりも手洗いやうがいをして病を入れない手立てが先ですが、どのような事態にも対応できる家であることも大事です。COVID-19という事態にも、考えさせられる家の対策はいろいろとあります。

ーおうちのはなし199号より

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください