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日本の住宅・世界の住宅-日・欧・米の住宅経済比較

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 住まい文化は、地域によって大きく差があるものです。暮らし方が違えば使い方も違い、もちろんデザインにも違いがあり、歴史も違います。また、逆に環境が違うからこそ住宅の違いが生まれているとも考えられます。そうした違いの中でも文化的な要素では無く、経済的な違いに着目してみるとどのような視点が生まれてくるのでしょうか。

ガレージと和室

 世界中のどの国にでも家の無い国はありません。同じように、どんな偉人にも生まれ育った家があります。もちろん、時代や国によって、あるいはその家族によって家の形は変わりますし、変わって当然のことです。
 こうした相違が、住まい方の文化に根ざしていることはよく聞かれます。
 例えば、日本の家は開放的ですが、西欧の家は閉鎖的です。それは中国大陸の家の多くが閉鎖的であると考えると、東西の文化の差でもありません。石や土で作る家と木組みでつくる家の差なのかもしれません。
 でも、古代の木組みの技術は中国から伝来してきたとされていますし、日本でも土壁は一般的な建て方でした。
 さらに、下足と上足の暮らし方も大きな相違があり、日本には入浴という習慣があることで、水周りのつくり方も西欧とは違います。どちらかが良いという話では無く、住まい方に慣れてしまえばどちらも極めて普通のことで、まさに文化の違いに他なりません。


 それは憧れの間取りにも現れます。たとえば生活空間が十分に満たされた上で、さらに+αの部屋を叶えられるとしたら、日本人は和室を願いアメリカ人はガレージを願うといいます。ある意味では間取りの上での豊かさの象徴がガレージと和室であり、日米の家に対する違いが現れています。
 それどころか、日米の家を建てる法律でも差があります。アメリカでは自由に設計して家を建てようとするときには約56坪以上の大きさとすることに加え2台以上のガレージを併設する条件が法律で定められている地域もあります。敷地に対する最大の面積が定められている日本とは全く逆です。
 ガレージが欲しいか、あるいは和室にしたいかの差は、たしかに文化的な差異ですが、面積を含めた定量的な数値にはそれだけでない要因が見えてくるように思えます。その一端が毛材的な要因です。
 グローバル化の時代に家族が暮らす場所としては、リビングやダイニングがあり、寝室が揃っている家の形は、どの国でも大きな差異は無いはずです。その中でも、世界の国々にある経済的な差異を比較して、改めて日本の住まい作りを考え直してみたいと思います。


 最初に、事例となった家の面積で日本の家を世界と比べたらどうなのでしょうか。日本の家はウサギ小屋といわれることもありました。いかにも狭い空間に押し込まれているようなイメージがあります。
 欧米5カ国と比較すると、すべての住宅を平均した面積は、わずかの差ですが、たしかに最も面積は小さくなります。

赤が持ち家・青は賃貸

 しかし、この内訳を持ち家住宅と貸家に分けると、見え方は大きく変わります。持家住宅ではアメリカは別格としてドイツ・フランスの家に並びイギリスよりも面積は広いのです。
 この日本の平均の居住面積を下げているのは、じつは貸家の居住面積であることが分かります。貸家の平均面積46㎡というのは28帖にも足りません。この中に玄関や水周りや収納・通路があることを考えれば6帖間3部屋をLDK+寝室として使い回しているような状況です。
 この5カ国の中でも最も貸家の面積が小さいフランスでも、さらに6帖二間以上広い貸家に住んでいるのです。日本の家をウサギ小屋と揶揄したのは、この貸家の貧しさを指しているのではないかと思われます。その割に賃料も高いので貸家から出ることを願う人が多くなるのも当然です。

戸建て住宅と共同住宅

 賃貸の面積が小さいことは、実は賃貸の種類も一因になっています。たとえば、戸建住宅と共同住宅では、一般的に戸建住宅の面積が大きくなるものです。この持ち家と貸家の各国の貸家率を並べてみると次のようになります。

 どの国も共同住宅の貸家率は70%以上と変わりませんが、面積の広い戸建て住宅を貸家にしている率は、日本が特に少なくなっています。日本で住み甲斐のある貸家に出会うことは簡単では無いのです。
 これを含めて、欧米各国の住宅ストックをグラフ化してみました。縦に見れば、それぞれの住宅の割合が分かり、グラフの太さは各国の住宅総数を表しています。

 フランスやドイツは持ち家が少なく、半数を切っていることが分かります。それに対して、日本は持ち家率が決して低くないことが読み取れます。
 じつは2005年以降、アメリカの持ち家率が少しずつ減少しつつあります。その理由は簡単ではありませんが、グローバル社会になって貧富の差が拡大している時期とも、ちょうど重なっています。若い世代層の住宅取得が難しくなっているのも要因のひとつと言われています。
 住宅取得には住宅ローンを抱える必要もあります。若い世代が自由に家を求めることが出来る社会であることは、とても大切なことであるはずです。

空き家率

 このグラフのデータには、イギリスを除いて持家、貸家の他に、空き家の数も掲示されています。実際に見比べても日本の数値は大きく、空き家率の上昇も問題になっています。実際に不動産が流通するためにはある程度の空き家もなければなりません。それでも日本は多く感じます。
 しかし、この空き家率も戸建住宅と共同住宅で比較すると、圧倒的に共同住宅の方が高くなります。ただし、両親が住んでいた家が空き家となるなど、戸建て空き家が増える傾向にあることも間違いありません。
 それ以上に、フランスの住宅ストックを見ると、空き家に対する考え方のヒントが見えます。セカンドハウスも日常的に使われていない家と考えれば、フランスの空き家率は19%にもなります。でも半数はセカンドハウスとしてしっかり活用されています。
 たとえ持ち家率は低く貸家に暮らしていてもセカンドハウスを持つというライフスタイルもあります。こうしたマルチハビテージョンの暮らし方ができるようになれば、日本にはまだ住宅が足りないと考えることもできるのです。そこで各国の住宅に対する投資の状況を見てみましょう。

住宅投資

 各国で国内の固定資本の中で、住宅に投資している割合をグラフ化すると次のようになります。日本と比べて欧米が住宅資本投資が多いことが分かります。

 ただし、間違えてはならないのは、この投資が新築だけでは無いとことです。住宅を資産価値として考える欧米では、既存住宅への投資も積極的に行われているのです。住宅投資に占めるリフォームへの投資額を日本と欧州で比較してみると次のようになります。

 さらに、新築以上に既存住宅の流通も盛んで、欧米各国でみると次のようになります。

 グラフの横幅は各国の住宅の新築と既存住宅流通の戸数を表し、その中での新築の割合を表示してみました。一目で分かるように、日本ほど新築住宅が建っている国は珍しいことが分かります。
 そして、このような住宅市場の状況から想像できることもあります。それはそれぞれの国の建築士の活動です。基本的には建築士で、一般的な住宅の設計を行っている人は欧米では決して多いとは考えられません。

注文でつくる家

 先のデータの時には、日本とアメリカの新築着工数はあまりかわりませんでしたが、現在のアメリカの新築着工数は1.5倍ほどに大きくなっています。人口差や人口増を考えれば当然のことだと思われます。
 そこで新築の住宅が多く建設されているアメリカと日本で、建てられている住宅の内容を比較して見ましょう。全体の大きさは日本が96.7万戸、アメリカが117.4万戸という着工数を表しています。その内訳を大きく分けると、注文住宅が赤系統、分譲住宅が橙系統、貸家住宅が青系統です。

 日本では半数近い数の貸家が建てられています。しかも、その多くが面積の小さい安普請の共同住宅であることは先にも書いてきました。狭い貸家に暮らしているからこそ、注文住宅にも住みたくもなります。
 一方、アメリカでは分譲住宅が半数を占めていることが分かります。その分譲住宅でも、日本のマンションのような共同建の分譲はあまり多くはありません。資産価値を生み出す街作りの盛んなアメリカでは、戸建ての分譲住宅が多いのです。
 これに対して日本では持ち家の注文住宅が1/3ほどになっています。アメリカの住宅市場では、設計をして想い通りに家を建てるのは、本当の富裕層に限られていることです。
 さらに、アメリカではDIYも盛んで、注文住宅の内のおよそ1/3は自己責任の上自分で建てる家です。
 純粋な注文住宅と考えられるのは全体では10%、戸建住宅の中でも15%しか注文して建てられている家はないということになります。
 注文住宅の実数を見ても、設計をする建築士の数は日本の1/3程で充分に足りるということです。
 経済的な数値を紐解くと、どうやら日本と欧米では住宅市場や投資の対象、そして建て方でも大きな違いがありそうです。

家を建てている人

 その中で逆に、世界の中でも変わらない要素もあります。それは家を建てている担い手でもあるビルダーの構成です。もちろん建築会社としての事業を成功させれば、どの国でも大きな家づくりの受注を担う大企業に成長するはずです。
 日本でも年間千戸以上を建設する大手の住宅メーカーが3~40社ほどあります。こうした大手住宅メーカーと、地域のビルダー(工務店)は建てている住宅の種別で区分されています。
 たとえば、マンションを手がけるのには、相応の資本力のあるデベロッパーでなければ簡単ではありません。同様に、分譲住宅を手がけるのにも土地の決済や建築費の負担などを要し、資金力のある企業が手がけることが多くなります。
 そして貸家は、相続税などの税制や資金繰や経営計画などのアドバイスが重要です。これも組織力のある大手住宅メーカーの得意とするところです。
 一方、注文住宅は細やかで柔軟な対応と、地域に根ざしたつながりこそが大切で、今でも7~8割は地域工務店が担っています。どんなに大てっじゅうたくめーカーが半世紀以上をかけて信頼獲得を目指しても叶わなかった市場です。
 先の欧米の住宅市場のように、注文住宅が少ない国々でも、実は担い手のあり方は変わっていません。多少の規模に相違があっても、アメリカや欧州にも大手と言われる住宅メーカーがあって当然のことです。しかし、分譲住宅が半数を占めるアメリカでも全米のビルダーの内、約60%は建築数が年間10戸以下のビルダーによって支えられています。
 それは欧州も同じで、地域に建築を担うビルダーがいなくなれば、その地域の維持はできなくなるかもしれません。どんなに経済指標をひっくり返しても、地域の家づくりの担い手として地元の工務店を抜きにしては考えられないというのが、世界の共通点であるという事です。

(おうちのはなし200号より)

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